人見知りの犬と仲良くなる方法(動画付き)
2015.12.11
先日、武器を持っているかもしれない容疑者と向き合ったときに警察官の心拍数が上がる、という話の中で、万が一襲いかかられた場合に自分が怪我をしない最低限の距離がある、と書きました。当然、アメリカの警官が想定しているのは、相手が銃を持っている可能性です。(参照:見知らぬ犬や人に吠える犬の気持ち:武装した容疑者と向き合う警察官)
自然界にも、襲う側の射程距離と襲われる側の安全距離が存在します。
犬の散歩中、スズメやハトが地面の餌をつついている横を通り過ぎることがあると思います。
鳥たちは、ある程度犬が近づいても、逃げません。鳥に興味がなくのんびりと歩く犬の場合、かなりの距離近づいても、そしらぬ顔で餌をつつき続けます。でも、決して注意を払っていないわけではありません。ちゃんと、犬の様子から、この犬は危険か危険でないか、評価しているのです。
初めは芝生のにおいの方が気になって鳥に興味がなかった犬が、途中から鳥に興味を移した場合、その瞬間に鳥たちはさりげなく遠ざかって距離をとります。犬が走って襲いかかれば、飛び立ちます。
犬をかわいい、と思うと私たちはつい触ろうとするものです。でも、特に犬好きな人のこのような行動が、怖がりの犬を遠ざけている原因のひとつ。
先日、子犬のトレーニングでおうかがいした家には5歳の先住犬(チワワ、メス)がいました。その犬は見知らぬ人が苦手なのですが、子犬のトレーニング中も、私のそばを離れませんでした。飼い主さんは、その様子をみて、
「えっ?なんで?この子は家族以外の人になつかないんです。こんなこと初めて!」
普通は、何度も会っている人にも近づかれると吠えてしまうので、「犬好きの親しい人なんですが、いつまでたってもまったくなつかないので申し訳なくて」というのです。
その犬が、私の前に来ては「オヤツちょうだい」とおねだり。好みのうるさいMちゃんですが、たまたま私の持って行ったオヤツがいたく気に入ったことが大事な要素だったのは間違いありません。
でも、Mちゃんがあっという間になついた理由は、オヤツではありません。
私が撫でようとしなかったからです。私の方からは決して近づかず、犬から近づいてくるのに任せたからです。
犬が好きな人は、犬との距離を縮めたいと思うと、一生懸命「おいで、おいで」と声をかけたり、オヤツをあげようとしてしまいがち。でも見知らぬ人が苦手な犬や警戒心の強い犬にとって、近づかれるのがダメなのです。興味を持って近づいてくる犬からさりげなく遠ざかるハトと同じ。襲いかかる(この場合、手を出される)危険がなければ、逃げません。
犬は「この人は大丈夫」と思ったら近づいてきます。犬にとって「この人は危険ではない」とは、犬自身が距離感をコントロールできる、ということです。だから、やっと犬が近づいてきて、手を伸ばせば触れる距離にきた時、嬉しくなってつい手を伸ばしてしまってはいけません。あなたの手のひらにあるオヤツに近づいたときにも、犬がそれを食べて遠ざかるまで、その手を動かさないでじっとしているのがポイントです。
※極度の人見知りの場合は、別のアプローチが必要です。
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