ボブ・ベイリーのチキンワークショップ①3歩あるいたらすべて忘れる?ニワトリを訓練できるか?!チキンワークショップで技術向上を目指す
2014.03.13
私はドッグトレーナーとしての技術を磨くため、これまで様々な犬の理論的・実践的セミナーを受けてきましたが、8年も前から(2005年ごろ)ずっと「いつか受けたい!」と思い続けてきたワークショップがありました。それは、“動物トレーニングの神様”ともいえるボブ・ベイリーの主催する、通称「チキン・ワークショップ」です。
そのころ私は、当時ではまだ主流だった犬のトレーニングについての考え方に疑問を持っていました。
「犬を飼い主より前を歩かせると犬がリーダーになる」
「食事は人間が先にしてから犬に与える」
「引っ張りっこをして遊ぶ時は、必ず人間が最後に勝たなければ犬になめられる」
「子犬は一人で寝かせ、鳴いても無視する。1週間もすれば慣れる」
「言うことを聞かなかったらひっくり返して押えつける(服従させる)」
どれも納得がいきませんでした。なぜなら、私の犬はほとんど常に私のちょっと前を歩いていました。が、だからといってどう見ても私の犬が支配的な様子は見られなかったし、それどころか良く言うことを聞きました。私の犬の場合、ただ歩くペースが私より早かっただけ。人間にも人によって自然にもっているリズムが違うように、犬もそれぞれ。それだけのことでした。
今ではどれも、犬の支配性や服従心とは直接関係ないことがわかりましたが、なぜこのような説明になってしまうのか、それを説明できる理論を探し当て、正しく理解するまでにはそれなりの時間がかかったのです。
ボブ・ベイリー(Bob Bailey)を知ったのは、彼のワークショップで学んだことのある世界レベルのアジリティ(犬の障害物競走)のトレーナーの本です。
ボブの経歴に興味をそそられ、彼のレクチャーを収録したDVDを買ったのですが、そのビデオの中ではチキンワークショップの動画が紹介されていました。
なぜニワトリなんだろうか?なんのためにニワトリを訓練するのだろうか??と思いますか?ー私は思いました(笑)。同時に、「これだ!これが全ての原点だ。この人しかない!」という直感があったのです。
でも、その頃はまだインターネットの情報も少なく、何となくそのままになってしまいました。
その後、私は疑問を持ちつつもドッグトレーナーとなりましたが、その間「クリッカートレーニング」という音を合図に犬をトレーニングする方法を独学しました。
ボブに会うチャンスが訪れたのは、ボブのことを知ってから6年後、夫の転勤に伴ってアメリカに住んでいたときです。
ボブと妻のマリアン(Marian Breland Bailey, 1920-2001)は、たんなる動物トレーナーではありません。マリアンは、「オペラント条件付け」という行動の法則を解明したB.F.スキナーの弟子で、心理学者。同じくスキナーの弟子だった前夫のケラー・ブリーランド(Keller Breland)とともに、オペラント条件付けを実用化し、ありとあらゆる動物をトレーニングした人物です。その経験の中から、ニワトリが、動物トレーニングで重要な要素を示すのに、最適なモデルであると考えるに至った、というのです。
そう言われても、何のことやらよくわからない・・・しかし、
「ボブがトレーニングした野生のイルカは何百キロにも及ぶミッションを脇目も振らずにやり遂げていた」
「猫をトレーニングして、盗聴装置をつけ、思うままの場所に誘導し、冷戦時代にロシアでスパイ活動を行なっていた」
「動物に罰を与えなければならなかったことはない」(正の弱化)
などと聞いてしまっては、、、犬のようにリードをつけることもできないし、水族館で生まれ育って人間にも慣れていてどこにも行くことができないイルカでもないのに、なぜそんなことが可能なのか、知らずにはいられません。
2010年から毎年ボブのレクチャーセミナーに参加し、2013年と2014年で、全5レベルのチキンワークショップを終えました。
今思うと、最初はいかに何もわかっていなかったのかと感じます。話を聞いただけでは絶対にわかりません。ワークショップを受けても、簡単に全てがわかる訳でもありません。というより、時間をかけて理解度が深まっていくというのでしょうか・・・。
レベル1だけしか受けない人もたくさんいます。半数以上がそうかもしれません。それだけでも十分価値はあるので、どこまで目指すかは個人の目的によるでしょう。
時間がたってもワークショップで学んだことがじわじわと身にしみてくるし、新たな発見があります。それだけ深く考えられているのは本当にすごいとしか言いようがありません。
これから数回にわたって、このセミナーの魅力、セミナーで学んだこと、また指導者ボブの魅力について等、お話していきたいと思います。ドッグ・トレーナーのニワトリとの奮闘記、お楽しみ下さい。