「問題行動が続いている時間と同じだけ治すのに時間がかかる」は“セールストーク”

2015.10.07

他の犬に吠えてしまうので困ってしつけ教室に通っていた、ある飼い主さんがそこで言われたそうです。

「これまでX年放置していたのだから、治すのに同じだけ時間がかかる。少なくとも1クール(6回)の教室にX回は通ってもらわないと」

…結局、その先生がいるその教室では吠えなくなったけど、普段の散歩はまったく改善しませんでした。

教室で吠えなくなったのは、初日に吠えた時、先生にリードを強く引っ張られたからです。「教室=先生=吠えると引っ張られる」と覚えたのですが、それ以来、教室の間は吠えなくなったので、飼い主さんが練習をする機会もなくなった…

他にも4キロほどの小型犬の飼い主さん。「以前もトレーニングを頼んだことがあるのですが、訓練士さんがリードを強く引っ張り、この子がふっとびました。これくらい大丈夫だって言われたのですが、首も細いし心配で…」とのこと。

やはり普段の散歩中に、トレーナーと同じようにはできず、結局、改善しませんでした。

 

強烈な体験…それが強いショックであれすごく嬉しかったり楽しいこと…というのは、1回で覚える可能性があるのは事実。ただし、それを正確にできるのは、プロでも数は多くありません。さらに、嬉しいことより恐怖の方が浸透しやすいリスクが大きく、トラウマになって問題がこじれてしまうケースも少なくないので、気軽に使う方法ではないのです。

上記の例の場合、犬に覚えて欲しいのは、「吠えないで」だったのに、実際に覚えたのは、「この人の前、この場所では吠えない方がいい」でした。そして他の犬が苦手という根本的な問題の解決にはならなかったのです。

 

リスクをともなう方法を避け、普通の飼い主さんができる方法で、学習を左右するのは時間ではなく、回数です。

覚えて欲しい「新しい行い」の結果に良いことが起きる、という経験を何回積み重ねられるか、にかかっています。これまで100回、「間違った」ことを繰り返してきたのであれば、100回以上、「正しい」ことを練習しなければなりません。

 

…実際は、実験室のように単純に回数だけを計算できるものではありませんが、少なくとも、同じだけ時間がかかる、とは言えません。

 

その他の要因は、その犬の持って生まれた性質、例えば学習速度や性格、これまでのトレーニングの経験など、そして、教え方の効率に大きく左右されます。

何回セットの教室に何回通わなければ治らない、という理由を、自分の“経験”以外の根拠を説明できるでしょうか?

根拠の曖昧なセールストークに惑わされないでください。長く通えば治るものではありません。

 

カテゴリー: しつけのコツ 散歩 犬の習性と行動

 

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