本気噛み!しつけにも限界はある

2014.10.03

正しいトレーニングをしても改善されない場合は、それ以外の原因を考えなければなりません。

かわいがっている愛犬に「何らかの問題がある」と受け入れるのは飼い主さんにとって決して易しいことではありません。ご相談をいただく飼い主さんはみな、本当に真剣に愛犬のことを考えていて、しつけに真面目に取り組んでいます。

めったにないのですが・・・エルモのように(甘噛み?それとももしかして神経症?を参照)これといった理由がないのに壁を噛む、といった困った行動がみられるとき、実は病気が原因だった、というケースもあるわけです。

どんなにトレーニングをしても改善が見られない・・・そういう場合、トレーニングだけでなく薬の力を借りなければならないこともあります。(注意:“適正な”トレーニングをした場合です。間違った方法で問題を悪化させてしまうケースも少なくありません)

いろいろなケースが考えられるのですが、おおまかには、

①エルモのように、病気持ちだったので、薬の処方だけで問題は落ち着き、特にトレーニングは必要ない。

②トレーニングが上手くいくように補完的に薬を使う。例えば、極度の不安症でオヤツも受け付けないような状態では、新しいことを学べる状態ではない、ということ。初期段階に薬を使って落ち着かせ、トレーニングが進んでいくとともに薬の量を減らしていきます。

③脳内物質に何らかのアンバランスがあり、薬は続けなければならないが、同時にトレーニングも必要。例えば、噛み付く威嚇するなどの困った行動が身に付いてしまっている場合、薬だけではなくトレーニングをしないとケガをする危険性があります。

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実際には、このようにきれいに線引きされているとは限りません。

 

あるケアンテリアは、ある種の鎮静剤を処方されていました。薬を処方してくれている獣医さんに問題行動の専門トレーナーに見てもらうように言われたそうです。

薬を飲む前は、長時間吠えながらグルグル走り続ける、といった過剰な興奮状態が多くみられたそうです。「薬で落ち着き、それ以外は本当によく言うことをきく」とのこと。マテといったら飼い主がマテと言ったことをうっかり忘れてしまっても微動だにせずまだ待っている、のだそうです。ただその一方で、一度インプットされると固執する傾向があるようでした。何年も問題なく生活してきたのですが、あるとき、いつもと違うタイミングで夕食後にオヤツをあげたそうです。それをきっかけに、夕食中、「早くくれ」と言うように吠え続け、食卓の周りを走り回るようになってしまったんだそうです。朝食でも昼食でもなく、夕食のときだけ!

このケースでは、すでに薬をのんでいたので、普通にトレーニングを行いました。

 

あるミックス犬。6カ月になったころから、あることがきっかけとなり、体をさわられると噛み付くようになってしまいました。その他にも心配な行動はいくつもありました。

飼い主さんは「しつけが悪かった」と自分を責め、一生懸命トレーニングを行っていました。が、改善が見られる部分よりも悪化する方が大きく、家族がケガをする危険性が無視できなっていったのです。それでも、「できれば薬は使いたくない」という気持ちと、「よくなっているのだから、もっとがんばればどうにかできるんじゃないか」そんな思いが交錯し、なかなか専門の獣医さんに診てもらう決断ができなかったようです。

その後、獣医さんのもとで治療を初めました。やっと症状に合った薬が見つかり、犬も少しずつ落ち着きを取り戻し、トレーニングも続けています。

 

(心配な行動がみられる場合、専門の獣医、トレーナーにご相談ください。何らかの病気の場合、病名を診断できるのは獣医さんに限ります。トレーニングの限界を見極めるのもトレーナーの役割のひとつであるべきです。)

 

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