チキンワークショップ2016 Criteria①「人生はあいまい」
2016.02.05
チキンワークショップ2016 Criteria①「人生はあいまい」
このクラスのテーマは Criteria (褒美を与える基準)。参加者に与えらえる課題は1972年にボブ・ベイリーScDが「アニマル・ビヘイビア・エンタープライズ(Animal Behavior Enterprise)」の顧客の要望に応えて考えたものだった。「それがチキンワークショップの生徒たちにもぴったりのエクササイズだったんだ」とボブ・ベイリーScDは言う。
原型のままこれまで続いてきているとは、いかに完成度が高かったかを物語っている。このエクササイズに限らず、ボブの知識の深さは計り知れない。他のエクササイズもほとんど変わっていない。
このクラスでトレーナーは、ニワトリをトレーニングする時に、長方形のテーブルの端から動いてはいけない。さらにどのクラスでも共通のルールは、うっかり間違ってクリッカーを鳴らしてしまったら、「罰」として褒美を与えなければならない。
「もっと良いトレーニング方法はあるけど、それではトレーナーのスキルを磨くことにならないからね」とボブ。
Criteriaと呼ばれるのは、何を「基準」に褒美を与えるのかがはっきりしていないからだ。ニワトリに目標となる円を突かせるのは、誰だって見ればわかる。でも2つのコーンの外側を回らせる場合、円のどこで何を基準に褒美をあげれば良いのか?
「基準があいまいだから、これはキツいエクササイズだ。すべてのエクササイズの中でこれが1番難しいと感じる生徒は多いんだ。でも、人生だってあいまいなものだよね。何を基準に物事を決めるのか、その判断基準が明確ではない中で、私たちは次々と判断に迫られながら生きている」
簡単、簡単、そんなシェイピング、と思うかもしれないが、そんな単純なエクササイズのはずがない。ニワトリは犬より小さく、動きが早い。普通の人はその動きについていけない。今回も、3日目に深刻な顔をしてホテルに帰って行った生徒が数名いた。
今回のメンバーは、 コンピューター科学者のデイブ。昨年の夏、メリーランド州のワークショップの1番目のクラスに参加し、予定を延ばして2つ目も受けて帰ったのだ。自己紹介で、また参加した理由を「こんなに知的刺激を受けるワークショップはない」と話した。デイブは、フィールドトライアルという猟犬の競技が趣味で、自分でトレーニングをしている。全米のハンティグ競技犬の上位1%しかフィールドトライアルレベルに達しないそうだ。
その他、「私は旧式のトレーナーです」とジョアーン。いわゆるチョークチェーンを強く引っ張って犬をトレーニングするやり方だが、そのような犬を力づくでトレーニングしない方法を学びに来ていた。
リズは、第二言語としての英語を教える先生。
フランスからは絶滅危惧動物を保護し繁殖しているメロディー。扱っているのはホワイトタイガーやリンクス、オーストラリアの有袋類の一種など、見たことのない動物ばかりだった。
中国からは世界トップレベルのディスクドッグ(フリスビー)の競技者、ジミー。日本から参加の私は、ただの普通のトレーナー…(普通じゃないか、笑)。
ボブが2013年に5日間のチキンワークショップを再開してから、リピートする人がどんどん増えている。パービーン・ファフッディによると、今のところ「記録保持者」はマーガレットで、15クラスだそうだ。パービーンも5クラスのコースを2回だか3回受けているはずだ。パービーンがボブを説得してオリジナルのチキンワークショップを再開したのは「私の目を開き、人生を変えた」からだ。(チキンワークショップ2013年を参照)
このチキンワークショップを経験すると、他のセミナー等に行く気がなくなる…というか、行く必要が全くなくなった。純粋で正確な科学的な情報が得られ、最高の技術を得られる場…私にとって、ここに全ての答えがある。
(続く)