ボブ・ベイリーのチキンワークショップ③なぜニワトリが教材なのか
2014.03.17
ボブ・ベイリーのオペラント条件付けワークショップ(通称チキンワークショップ)でニワトリをトレーニングするのはなぜなのでしょうか?
ボブとマリアンの何十年にもわたる動物トレーニングの経験で、短時間で行動の仕組みを学ぶには、ニワトリの中でも、レッグホーンという種類に勝る教材はない、という結論に至りました。その理由は、①動きが早く②賢い③捕食動物で④適当な大きさ、だからです。
ニワトリは、限られた動きしかできないかもしれませんが、物を持つ、引っ張る、つつく、など、十分にさまざまな芸を教えるだけのことができます。動きも素早いため、トレーニングするにはタイミングを外さないことが大事になります。
単純な思考能力しかないからこそ、ニワトリは学習が早く、他の動物では何日もかかるトレーニングを数時間や数日に短縮して行うことができます。犬や人間のように知能が発達していると、余計なことを考えたり推測して、かえってトレーニングの邪魔になったりします。犬のように「人間の意図を読む」能力が優れていると、たとえトレーナーがミスしたり力不足でも、犬
のおかげでトレーニングがうまくいったように見えてしまうわけです。しかしニワトリが相手だと、トレーナーのミスは見事に現れ、それに向き合わなければなりません。
さらにニワトリは、他の動物の獲物となる被捕食者であると同時に、小さな虫などを捕まえて食べる動物で、人間を威嚇て追いかけたり、つついたり噛んで攻撃してきます。痛いし、ちょっとした傷跡にもなります。そうはいっても大きすぎないので、トレーナーに適度なプレッッシャーを感じさせるのです。そしてネズミのように小さすぎて動作が見にくいこともありません。
私のレベル1のパートナーは、何度も餌をねだるニワトリに攻撃されました。なかなかご褒美の餌がもらえなかった時、餌のカップを持っている手を目がけてつついてくるので、彼女はその度に少しずつ後ずさり。ニワトリは、2度ほどトレーニング用のテーブルから落ちてしまいました。
「つつかれても動いちゃだめ」と言っても怖がっていました。ニワトリはそれを見てどんどん攻撃をしてくるのです。餌のカップを胸の前に持っているため、胸をつつかれて涙をうかべていた友人もいました。
ボブは、「他のチキン・ワークショップでは、茶色いニワトリを使っていたりするようだね。でも、私がレッグホーンにこだわるにはそれだけの理由があるんだよ。いろいろな品種改良が行われているニワトリの中でも、レッグホーンは、性格や身体的特徴などあまり手が加えられていないんだ」と説明しています。
確かに、2013年のワークショップでは、教材の大切さを実感することになりました。