ボブ・ベイリーのチキンワークショップ④美しくもおばかなチキン
2014.03.19
2013年に米国メリーランド州で行われたオペラント条件付けワークショップ(通称、チキンワークショップ)は、10余年ぶりにボブが米国内で主催するワークショップ。このためにトレーニングの教材となるニワトリも新たに用意されました。2〜3歳の若いレッグホーンで、数カ所から入手されました。初めてワークショップで使うのので、当然、ボブもパービーンも個々のニワトリの性格はまだ知りません。
レッグホーンは主に卵を得るために飼育される種類なのですが、この中には「ショー用」のニワトリが何羽か含まれていました。ショーというのはファッションショーやドッグショーのように、ニワトリの美しさを競う競技(というか品評会?)です。問題となったニワトリは、トサカが極端に小さく、豪華な羽を持ってました。さらに、ワークショップが始まってしばらくすると、他にも攻撃的な傾向があることもわかってきました。
そしていざ課題の重要なステップで、ショー用レッグホーンの「学習能力」に、先天的な問題がある可能性が高まったのでした。
課題は、4つの異なった図形を識別させること。しかし、どんなにトレーニングしても、なかなかターゲットである指定の図形を覚えることができないようでした。ショー用レッグホーンを使っていた友人、キャロルは、「しばらくはちゃんとターゲットの図形をつつくの。だから覚えたのかと思うと、まったく忘れたように別の図形に戻ってしまうのよ」
困ったキャロルはボブに助けを求めましたが、ボブにもどうにもできませんでした。
ボブはニワトリを教材から外し、休憩時間やワークショップの後にパービーンとともにいろいろな実験をしました。
「このニワトリは、全然あきらめる様子を見せないんだ。違う図形をつついて褒美がもらえなくても、いつまでもいつまでもがんばり続けるんだ。ちょっと普通ではない。もう少しいろいろ試してみないとわからないけれど、トレーニングの問題ではないかもしれない」
可能性として、図形をきちんと識別できていないか、つついてしまう衝動を抑えられない、があるとのことでした。
犬の中にも、極端に落ち着きがなかったり、衝動的に噛んでしまう、といった性質の犬がいます。トレーニングで改善する場合と、先天的な場合がありますが、先天的だと判断された場合は、投薬しながらトレーニングしなければならないケースもあります。
ショー用レッグホーンは、トサカとともに頭も小さく“改良”されていたのですが、それが関係があるかないかはわかりません。この他にも、食肉用に極端に胸を大きく改良されたニワトリや、飼育しやすいようにおとなしい性格に改良されたニワトリも、動きが鈍いので教材としては望ましくないそうです。 ⑤3日か5日か、それが問題だ