ありのままの犬を「見る」
2015.05.14
Kナインノーズワークは、楽しみながら犬を犬として理解するにはすばらしい遊びです。飼い主さんはこの遊びを通して犬の微妙なしぐさが見えるようになり、犬をより深く理解することができるようになります。一方、犬は、制約の多い人間社会での生活では埋もれている、犬としての本能を発揮することができ、犬としての“自分を思い出す”のです。
吠えや怖がり、興奮しやすいなどの問題のある犬の中には「基本的な欲求」が満たされていないことが多く、それを満たして上げると問題は改善することがあります。
Kナインノーズワークをとおして犬が自身をつけていき、さまざまな問題を克服していく助けになります。飼い主さんとの共同作業で行っていきます。
オヤツをばらまくといった“ノーズワーク”もありますが、その方法の目的は全く別のものです。
以下、Kナインノーズワークとそれ以外のノーズワークの違いについて、本部であるアメリカの全米ノーズワーク協会(NACSW)が主催するK9 Nose Work Yahoo Group のディスカッションの内容を説明を交えながらご紹介します。
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3人の考案者(Ron、Jill-Marie、Amy)が一番初めから繰り返しているメッセージは K9 Nose Work においては「犬の最も自然な様子を観察し、犬から学ぶこと」です。
犬に鼻を使って何かを探させる“ノーズワーク”はいろいろとあるし、クリッカーを使ったり、初めからにおいを教えるといった方法もあれば、どのようにどこを探すのかを、人間の都合に合わせて教える方法もあります。
私は競技を「共通ルールのあるゲーム」と表現していますが、競技会は課題のひとつで、多くを学べる場でもあります。でも、勝つことやタイムを優先されると「人間が主体」になっていると言えるでしょう。
人間と犬が同時に主役になることはできません。
どんな犬でも K9 Nose Work を通じて、さまざまな苦手を克服したり、さまざまな変化が表れるのには理由があります。
家庭犬は今や「家族の一員」となりましたが、犬であることには変わりありません。その「犬」という生き物が、自然からははかけ離れたこの人間社会で生き延びるのに最も重要な役割を果たしているのは、嗅覚です。K9 Nose Work の手法は、その犬の持って生まれた生存本能を揺さぶるからなのです。
本来、母犬の子育ては、生き延びるためのさまざまなスキルを成長段階に合わせて少しずつ教えていきます。それと同じように、K9 Nose Work では、犬に合わせて少しずつ克服可能な課題を与えていきます。
この意味は、初めて Kナインノーズワークを始める犬が、短時間にどんどん変化していく様子を実際に見て、初めて実感できるコンセプトでしょう。どのようにそれぞれの犬に合わせて適切な課題を与えていくか、ビデオや言葉では表せない部分です。
K9 Nose Work に終わりはありません。犬もハンドラーも、変化し続け、学び続けます。それは、一定の規格や基準を満たさなければならないプロの探知犬や捜索犬には許されない、家庭犬だからこその“贅沢”でもあるのです。
古本優子
Kナインノーズワーク認定インストラクター
Yuko Furumoto, CNWI
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