多頭飼い④犬同士の関係をこじらす飼い主の“喧嘩の裁定”(上)

2015.03.26

多頭飼いをする方が増えていますが、2匹の犬が喧嘩をし、ケガをすることもあります。また、今まではちょっとしたいさかい程度ですんでいたのが、何かのきっかけでケガをするほどの喧嘩をするようになってしまった、ということもあります。

最近ご相談を受けたケースの場合、きっかけは…

①引っ越した

②病気の老犬を保護した

 

①新しいマンションに引っ越したら、激しく喧嘩をするようになりました。そして2匹はリビングと寝室をそれぞれの“縄張り”とし、相手が入ってくると威嚇。それも、お母さんが家にいる時だけに問題が発生します。

何が起きたのでしょう?

→ 2匹は自由勝手に暮らしてきて、これまでの家で問題がなかったのは、2匹ほぼ同時に子犬のうちから一緒に育ったから。2匹の間には「こういうときは、ここまでね」「僕はこれだけはゆずれない、でもこっちはいいよ」「僕はそれはどうでもいいや、でもこれはダメ」という暗黙の約束が自然に出来上がっていて、それでバランスが保たれていたのです。

新しい家に引っ越したことで、2匹の“関係”が不安定になりました。これまでのルールが適応されなくなったからです。ケガをするほどの喧嘩にならなければ、放っておいても落ち着いたかもしれません。でも喧嘩が激しかったため、飼い主さんは「激しく攻撃して相手にケガをさせた方」の「味方」をしました。でも実は、やられた犬の言い分を支持すべきだったのです。

「お母さん」がいるリビングの特権を得たのは、弟分の犬。飼い主さんには、犬たちの“本当の会話”がわからず、話がこんがらがってしまったのです。

さて解決策は?

犬同士は、飼い主さんには見えない(見てない)ところで、とても微妙な“会話”をしています。それは、よほど目の肥えた人間でなければ見えない程度のちょっとした目の動きなどを含む、ボディーランゲージ。飼い主さんが見えていることだけで判断すると混乱を招きます。

本当は激しい喧嘩になる前に防がなければなりません。でももし喧嘩が起きてしまったら、まずはどちらかを味方せずに2匹ともに頭を冷やしてもらうことです。

また、この家では、それまで犬は勝手気ままに暮らしていました。たまたま2匹の力関係のバランスがとれていたから大きな問題にならなかっただけでした。犬が飼い主さんの指示に従うことができないと、喧嘩を抑えることはできません。

 

②2歳の先住犬のいる家に、病気がちの10歳の保護犬が暮らし始めたところ、仲良くできず喧嘩になります。だいたいは、先住犬が新しい犬の耳などを噛んで血が出る程度のケガをしてしまいます。

お母さんは、そもそも新しく引き取った病気の犬のことが心配という状態にくわえて、先住犬に襲われてケガをしてしまうのですから、「どうしていじめるの!」と思ってしまいます。

 

でも…

(見知らぬ)犬同士で、相手が病気だろうが関係ありません。先住犬からすれば、急に同居するようになった厚かましいやつ、なんで新入りばかりお母さんにかまってもらえるの?と思うわけです。

一方、これまでろくにご飯ももらえないような飼育放棄の状態から保護された犬は、こんなに愛情いっぱい面倒をみてくれる家にきて、こんな嬉しいことはありません。こちらもお母さんの愛情をできるだけ独り占めしたいと思っています。

この2匹、「これだけはゆずれない」ということは、どちらもゆずらず、折り合いをつけるのに時間がかかりそうです。かといって放っておいたらケガする・・・お母さんがしっかり管理できないと2匹の関係は落ち着かないでしょう。

 

カテゴリー: 犬の習性と行動 犬の性質としつけ

 

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