あなたの犬はハッピーですか?(後)〜犬の本来の姿〜

2015.11.16

家畜、動物園の動物、ペット…何が「本来の姿」なのでしょうか?

野生動物の生態はすべてわかっていませんし、犬のように野生でも家畜でもない動物の本来の姿は、決まった形はないとも言えます。さらに人間の都合で“改良”され利用されてきた家畜動物やペットのほとんどは、人間の手をかりなければ生きられません。

より多くの肉を得るために成長速度を速められた鶏は、ある程度成長すると自分の体重を支えきれなくなります。“長生き”させると、足が折れたりして苦痛に苦しむことになります。犬の場合、例えば、ある特定の身体的特徴を過剰に強調した繁殖が繰り返され、帝王切開でないと子犬が産めない犬や、もともと身体的に不健康な犬や、ペットとして適さない性質の犬が繁殖されています。

一生を過密なケージの中で卵だけ生み続ける鶏、生まれたばかりの子豚をうっかりつぶしてしまわないように身動きがとれないようにされる母豚…そして屠殺される時、過度のストレス(恐怖など)を強いられる動物たち…。

日本では家畜がどのように飼育され屠殺されているかはあまり話題にならないし、家畜動物の扱いに反対して菜食主義となる人も少ないです。でも日本のほとんどの牛、鶏、豚などの飼育状態は、動物福祉の進んだ国では違法となるような状態のままだそうです。私もそんなレベルなのだとは思ってもいませんでした。

さらに、そんなのは家畜だけで犬には相当しない…とも言えません。主に小型犬の多くは、家畜と同じような状態で生産・飼育されているのですから。

犬の適応力は高く、都会化が進み、自然がほとんどなくなった社会にあっても、犬は人間とともに進化してきました。それでもあまりに自然から乖離すると、弊害が生まれます。犬の場合、まずは母犬の性質や飼育状況、生後2カ月までの経験が、よいペットになるかどうかを大きく左右します。それは、子犬が消費者の家庭に来る以前の繁殖者の問題です。(経験者の話(11/11/2015付 Facebookの投稿なのでいつまで読めるかわかりませんが)

 

動物福祉の5つの自由(あなたの犬はハッピーですか?(前)参照)は、いわば人間の基本的人権のようなものと考えられないでしょうか。

①飢えと渇きからの自由 Freedom from hunger and thirst.

②不快からの自由 Freedom from discomfort.(快適な寝床・安心できるクレート、清潔なケージなど)

③痛み、けが、病気からの自由 Freedom from pain, injury or disease.

④正常な行動を発現する自由 Freedom to express normal behaviour.(十分な空間、適切な施設、同種の仲間との交流)

⑤恐怖と苦悩からの自由 Freedom from fear and distress. (精神的苦痛を避けられる)

 

その後、家庭で暮らすようになってからの子犬の教育や犬の福祉を担うのは飼主さんの責任になります。犬はこうあるべき、こう飼うべきという形はひとつではないかもしれません。でも、犬の基本的な習性や犬種の特徴などははっきりしています。そしてどんな動物も、基本的な欲求と本能が満たされなければ幸せではないでしょう。過剰に吠えたり、落ち着きがなかったり、過度に怖がりだったり…という場合、何かしてあげられることがあるかもしれません。

人間は「健康そうで安心した状態のハッピーな動物を見ると癒され、幸せを感じる。一方で、不健康でストレスサインを出す動物をみると悲しい気持になる」そうです。

たとえ今そこそこ幸せでも、何をしてあげたらよりハッピーになるのか。

「うちの子はこうだから」と決めつけたり、「うちの子には無理」と思わずに、いろいろなことを試してみることです。そして犬の表情をよく見比べてください。ハッピーな時は、顔だけでなく、体全体で喜びを表すことがわかると思います。

 

(横浜市動物取扱責任者研修会、加隈良枝先生(帝京科学大学生命環境学部アニマルサイエンス学科)のレクチャーを参考にしました)

 


カテゴリー:  生活の質・健康管理 
犬の習性と行動

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