いい子が困った子に変わるとき:ご主人様を亡くした秋田犬

2014.10.08

秋田犬が散歩で歩いてくれなくて困っている、即決策はないか、とご相談いただいたことがあります。

きっかけは、「ご主人様」を亡くしたこと。これまでお散歩をしてくれていたおじいちゃんが急に自宅で倒れて亡くなり、それ以来、「散歩に行かない」と家から出すだけでも大仕事になってしまったのです。やっと家を出ても、「こっちに行く」「あっちは朝は行かない方向だよ」「まだここにいる」・・・。30キロ以上ある秋田犬です。ちょっとやそっとリードを引っ張ったって動きやしません。おじいちゃんは、のんびりしたお散歩に「忍耐強くつき合ってあげていた」というのです。

落ち着いた犬でしたが、繊細な性格でした。突然現れた私を初めはちょっと警戒しましたが、すぐに大丈夫だと受け入れてくれたようでした。でも、ただならぬ空気を感じたのでしょう。不安げなしぐさを繰り返しました。

飼い主さんもこの犬のストレスに弱い性格を知っていて、気を使わなければならないとわかっていました。でも「明後日には仕事に復帰しなければならないのに、このままでは朝のトイレ散歩のために毎日遅刻してしまう」と焦りはつのるばかり。

「普段は何の問題もないし、これまでまったく手がかからなかったんです・・・」。

 

公園のベンチでおじいさんと、のんびり海を見ている柴犬を見ると思います。「特にこれといったしつけをしなくても、いい子になる犬も多いんだよな」って。

 

ごはんの時間になれば、マテも言われず上げ膳据え膳。散歩であっちの方向に行きたいといえば、「そうかい、そうかい」とおじいちゃんは言うことを聞いてくれる・・・。それでも特に問題の起こらない犬もいるんです(笑)生活パターンさえ大きく変わらなければ、そのまま平和に暮らしていったでしょう。

ではそういう犬は「しつけ」をしていないのか?そうではありません。

おじいちゃんは、一見なんでも犬の言うことを聞いているように見えていたかもしれません。でも、そうでないときもあったはずです。「今はちょっと散歩に行けないから、ちょっと待っといてな」とか(笑)犬だって、わがままを通すときもあればおじいちゃんに譲歩することもあったでしょう。

そんな風に暮らす中で「こうすれば良いことがある」「こういうときはこうしてね」という一定のルールができあがっていった。それを「和犬だから」とか「しつけではなく信頼関係だ」とか、「秋田犬は一人の飼い主さんに忠実といわれるし・・・」などと言うのは簡単です。でも、洋犬(西洋の犬)でもこのように「しつけ」られる犬もいますから。

「理由」や「犬種」がどうであれ、ではどうしたらいいのか?

こういうトレーニングをしていけばこうなる、ということは言えます。でも「オヤツは大好き、でもそれはそれ。もらわなくてもいい」という犬は、「どういうときに、どの程度、どういうこと、をしたら従ってくれるか」を突き止めるまでが大変なんです。(前回のブラッシング嫌いのシーズーも参考)

それは毎日一緒に暮らしている飼い主さんが試行錯誤するしかありません。おじいちゃんが作り上げた犬との「関係」。それはオヤツをあげている、といった目に見えるやりとりではなかったので、他の人が簡単に再現できないのです。それならば、“わたし流”の「関係」を作るしかありません。

最後に飼い主さんは言いました。

「これで納得がいきました。私がちゃんとこの子と向き合うしかないってことが」

残念ながら、どんな方法でもこれをすればすぐどうなる、という問題ではありませんでした。時間が必要です。

そして当然、このケースでは「おじいちゃんの喪に服す」時間も・・。

 

 

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