噛む犬の攻撃性(上)トレーナーの勘

2016.06.15

牛皮スティックやジャーキーなどのオヤツを与えた時、人が近づこうとすると唸り、噛む犬がいる。

オヤツに限らず、その対象は、オモチャやケージ、ベッド、体を触ろうとした時、などの場合もある。

「飼い主に歯向かうなんてとんでもない!服従させなければ!」

という考え方の人もまだ多く残っているようだが、その考え方でトレーニングを誤ると悪化する危険があるので、下手に犬と対抗しないでまずは専門家に相談した方が良い。

 

多くの場合は、誤ったしつけや対応が原因だ。自分の身を守るためだったり、いつも欲しいものを飼い主さんに取り上げられていたからだ。普段はいい子なのに、特定の状況に置かれると、まるで人(犬)が変わったように歯を剥き出し唸り、攻撃してくる。

ただ、モノを守る犬の中でも、もともと攻撃性が強い犬がいる。

そのような犬の場合は、学習したことよりも持って生まれもった気質が原因で、犬の“意思”に関係なくスイッチが入ってしまう。これを“守る犬(Resource Guarder)”と呼ぶ。その程度もいろいろだが、子犬の時に噛む力のコントロールを学んでいない場合、噛まれて家族が大怪我するリスクも高い。

噛む原因と万が一噛まれた場合の怪我の深刻度を正しく判断し、どこまでトレーニングが可能か判断しなければならないのだが、リスクが高い場合は特に難しい。いろいろな判断基準が考案されてはいるが、これに関しては「トレーナーの経験と勘」がモノを言う。

アメリカ在住中、「保護犬を迎えたのだが、スティック状のオヤツをあげると人(犬が)が変わる。近づいた子供が噛まれて怪我をした」という相談を受け、深刻度を判断をするためにコンサルテーションに行ったことがある。

所属していたスクールのオーナーとの打ち合わせで、一番深く心に残っているのはこの一言。

「そういう犬を見たときは、“背中の毛”が立つのよ。そういう犬に出会ったらわかるわよ」

犬は危険を感じて興奮した時に背骨に沿った毛が逆立つ、を例えたのだが、日本語では背筋がぞくっとする、だろう。

この保護犬の譲渡団体では、気質のテストをしていなかったと思われる。また、一時預かっていた家庭では牛皮スティックのようなものを与えることがなかったため、わからなかったのだ。

それ以外にも「危ない!」と感じた犬が、数は少ないが、いる。特定の状況に置かれた時以外はこれといった問題はないため、プロでなければわからない小さなサインを見逃してしまい、問題が深刻化するまで気がつかないまま放置されてしまうこともある。

深刻なレベルでなければ背中の毛も立たないし、攻撃性を刺激しないように注意しながらトレーニングをすれば、大きな問題とはならないですむので、きになることある場合は早めに専門家に相談を。

 

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カテゴリー: 噛む 犬の習性と行動 しつけのコツ

 

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